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河馬はやっぱりいない

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2006年 05月 29日

読めばテニスが強くなる!

 ウイニング・アグリー 読めばテニスが強くなる
ブラッド ギルバート スティーブ ジェイミソン Brad Gilbert Steve Jamison 宮城 淳 / 日本文化出版
ISBN : 4890840222
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 テニス好きの人であれば著者のブラッド・ギルバートの名前くらいは聞いたことがあるだろう。プレーヤーとしては世界ランク最高4位。93年のジャパンオープンで決勝に進み、ピート・サンプラスと対戦した。勝てばサンプラスは世界1位になるという試合だったので記憶にある方もあるかもしれない。まあ試合の方は軽くサンプラスが勝って見事世界1位になった。

 ギルバートは選手としてはさほど印象に残るタイプではなかった。その彼が名を世に知らしめたのは引退後、アンドレ・アガシのコーチに就任し、低迷していたアガシを見事復活させたからである。その後アンディ・ロディックのコーチも務め、彼のUSオープン優勝に貢献した。「Winning UGRY」はギルバートによる、テニスが「うまく」ではなく「強く」なるための本である。

 テニスが強くなるにはどうしたらいいのだろうか。もちろん安定したプレーやフットワーク、体力が重要なのはいうまでもないが、実際のところ我々週末プレーヤーではそれらの劇的な向上はなかなか難しい(だからといってその努力が無駄だとは云っていない)。とすると、それ以外の部分のスキルアップを図る方が手っ取り早く試合の勝率を上げるのには効果的なのだ。それ以外の部分というのは、戦略と戦術、そしてメンタルである。

 これは目に見えにくい部分なのでその存在をえてして忘れられがちである。サーブが早いとか、フォアハンドストロークが強力だとかっていうのは一見して判る。だが、戦略に長けている人とそうでない人というのはそうそう分別できるものではない。それゆえに我々週末プレーヤーの多くはその部分を軽視しがちである。テニスのプレーレベルは似たようなものなのに戦績で差がつく原因はそこにある。

 テニスの試合に勝つための戦略上、重要なゲームというはどんなゲームだろう?あるいはゲームにおける重要なポイントはどんなポイントだろうか。ファーストゲーム?マッチポイント?

 本ではそれを自分もしくは対戦相手がこのゲームを獲得すると次がマッチゲームになるというゲーム・ポイントであるとしている。(6ゲームマッチなら)5ゲーム目をどちらかが取るというゲーム、40もしくはアドバンテージを取るというポイントで、本中ではこれをセットアップゲーム・ポイントと呼んでいる。セットアップゲームを自分が獲得すれば試合は相当有利になるし、セットアップポイントを取ればそのゲームを獲得できる確率はかなり上がる。6ゲームマッチで5ゲームを先に獲得すれば、相手は最低3ゲーム連続して取らないと自分に勝てないし、先に40かアドバンテージになれば相手はそこから少なくとも3ポイントを連続して取らないとそのゲームを取れないのである。

 よく試合開始から第7ゲームを取ることが重要とか云われる。これは6ゲーム後のコートチェンジのタイミングで試合の流れが変わることがよくあるからである。しかしゲームとしての重要性を考えればセットアップゲームがより重要ある。あるいは30-30からのポイントは重要とも云われるが、30-0でも30-15でも0-30でもそれは同じく重要である。とにかくそのポイントはただの1ポイントではない。

 そのゲームを獲得するには、ポイントを取るためには、どのような戦術で望めばよいのだろうか。

 以前「メンタルについて」で登場したサークルの実力者T君にこれを訊ねたところ、「気合を入れる」という実に体育会らしい抽象的回答を頂いた。彼の場合ポイントを取るための戦術に長けたプレーヤーなのでポイントによってそのスタンスを変更する必要はないのだ。本人曰く、自分は重要なポイントだからといって何かを変えなければならないようなプレーをしてはいない、とのこと。相変わらずむかつくヤツではある。

 ただ、特に重要だと思われるポイント(4-4の30-30とかノーアドの40-40とか)においてはかなりの高確率でネットに出ると云っていた。こういったポイントは当然相手もその重要性を認識しているので、慎重なプレーになる。リターンであればとりあえず返しておこうということになるし、サーブも確率重視の入れに来るサーブになる。チャンスボールが来る確率が高いのだ。

 Iさんというこれまたサークルの実力者だった女性に訊ねたときは「大事なポイントを必ず取るための布石を打つ」という答えだった。たとえばパスはクロスと決めてひたすらクロスのパスを打ち続け、相手にパスはクロスに来ると思い込ませる。その上で大事なポイントを迎えたときに相手の逆をつくストレートのパスを決めるのだという。

 お二方ともさすがである。参考にはなるもののレベルが高すぎていざ自分が実行する段になるとうーむという感じだが。

 個人的には重要なポイントはとにかくミスをしないということだけを念頭においてプレーすることにしている。ただこれだとポイントが長引くにつれていつのまにか「つないでいるだけ」になってしまい、思い切りのいい相手には押し切られるというパターンに陥りがちである。また、先のT君のような戦術のプレーヤーには思いっきりカモにされる。

 本の中では「大蛇のようにプレーしろ」というこれまた抽象的なアドバイスをしている。つまり、蛇が獲物を絞め殺すように最低限のリスクで相手を少しずつ追い込むプレーをしろということだ。

 基本的にはミスをしないほうがポイントを取る可能性は上がる。先のIさんのようにプレッシャーのかかる重要なポイントでそれまで打っていないショットを打つというのは、かなりリスキーな戦術である。まあ自分のメンタルの状況(こないだのエントリ参照)と対戦相手、試合の局面を考えた上でもっとも効果的を思われる戦術を選択するのが望ましいのだが、これを的確に行えるようになるには相当試合経験を積む必要がある。それも漫然と試合に出るのではなくプランを実行し結果を検証して次回に生かすというサイクルを繰り返すことが不可欠であろう。

 こんなえらそーなこと書いて、じゃあお前はどうなんだといわれたらまあそれはいつも通り別問題ということで。

by kelsokelsokelso | 2006-05-29 00:53 | テニス


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